馬とはぐくむ「生きていく力」(2)

各地の活動から

2025.2.16

馬の学校Milky Way  代表 峯﨑 友香理

馬とはぐくむ「生きていく力」(2)

 今回は、馬の学校Milky Wayが現在行っている2つの会員対象プログラムをご紹介します。一つは、週末にミルキーのお世話と乗馬を楽しむ「ミルキーフレンズ」、もう一つは、放課後にミルキーのお世話と乗馬、学校の宿題等をする「ミルキーアフタースクール」です。どのプログラムでも大切にしていることは、子ども自身の「やってみたい」という意欲を引き出し、子どもがそれに取り組めることです。

 

1.ミルキーフレンズ

 「ミルキーフレンズ」は、ミルキーのお世話や引き馬乗馬を行うプログラムです。子どもを含むご家族は土日の午前中に、大人の方は平日の午前中に活動を行っています。これは2022年にスタートした活動で、小学1年生までのお子さんは保護者と一緒に、小学2年生以上になれば一人でも参加可能です。現在、11家族、大人1人が会員となっています。
会費は、一家族一か月6,000円、大人の方はお一人一か月6,000円で参加の回数に制限はなく、毎週のように参加する子どもたちもいれば、月に1~2回のご家族もいます。家族単位での会費にすることで、ご家族みんなで体験していただけたらと願っています。

 

(1)活動内容
 掃除道具は、スコップとカゴ、熊手とちり取り、厩舎フォーク、と身体の大きさなどに合わせて使えるようにいくつかの種類を用意しています。ブラシもいろいろな種類のものがあります。複数の種類の道具を準備することで、子どもたちは使いやすさや、毛の抜ける時期にはどのブラシが適切かなどを自分で考え、自分で「選ぶ」というにつながります。
 また、決められたり指示された通りに作業をするのではなく、本人の気持ちを大切にしたいと考えています。疲れたり気が乗らない場合は別のことをして過ごすことも可能です。例えば、ツリーハウスに上ってみたり、木のブランコで遊んでみたり、田んぼに花を摘みに行くこともあります。そんな時間を過ごしてリフレッシュできると、たいていの子どもたちはまた戻ってきて馬の世話や乗馬に取り組み始めます。こちらが焦らずに待つことで、少しずつ集中できる時間も長くなり、他の友達とも一緒にお世話を楽しめるようになってくると感じます。
 乗馬では、軽乗鞍を使用して、いろいろな乗り方に挑戦します。前向きで手を離したり、正座をしたり、横向きや後ろ向きに乗ったり、子どもたちは自分で決めてチャレンジをします。小さな子どもたちは、保護者と一緒に乗ることもあります。
また、慣れてくると、手綱を操作して、止まれや進め、右や左への誘導などを行い、馬とコミュニケーションを取れるように練習していきます。この場面では、自分の行きたい方向に馬を誘導できないなど、うまくいかないことも学びの機会と捉えています。なぜうまくいかないのか、どうすればうまくできるのかを考えることで、次に生かすことを体験してほしいと考えています。
 活動日によって参加人数が違ってきますので、人数が少なければゆっくりじっくりと時間をかけて取り組むことができますし、多ければみんなで協力して行う活動に取り組む機会にすることができます。この二つの可能性を意識し、子どもたち一人ひとりのペースを大切にする中で、子どもたちは全体の流れを理解しながら活動できるようになったり、子ども同士で工夫し協力することを学ぶことが可能になります。
 さらに、もっと長い時間馬とかかわりたいと思う小学生のために、本人の意思があれば1日参加することも可能としました。それぞれの子どもに応じたステップアップを目指し、一人で馬のお世話ができるようにと取り組む子どももいます。また、ビジターの予約が入った時には、プログラムのお手伝いをしてもらうこともあります。参加者にクイズを出したり、見本になったりすることで、子どもたちは自信を得て、大きな成長が見られるようになっています。

ツリーハウス

 

2.ミルキーアフタースクール

「ミルキーアフタースクール」は、午後3時30分~5時30分の2時間を活動時間にしている、2024年6月から新たに始めた活動プログラムです。月曜日と水曜日の2コースがあり、1時間は「馬のお世話(月1回引き馬での乗馬)」、次の1時間は「学習タイム」となっています。現在は小学1年生~5年生までの7名の子どもたちが通っています。

 

(1)活動内容
 毎回同じメンバーが集まることになるため、馬のお世話を通して子ども同士の関係性を深め、楽しく学習もできる場となることを目指しています。
「馬のお世話」は、主に掃除やブラシがけ、エサ作りなどを行います。毎週定期的にお世話をすることでミルキーとの距離も少しずつ縮まっていきます。安全面でのサポートが必要なブラシがけ以外の作業は、慣れてくれば子どもたちに任せるようにしています。そうすることで、子ども同士で協力したり、どうすれば正確にできるかなどを考える機会となり、自分たちでできたということが自信につながっていくと考えています。
このプログラムには、月1回のお楽しみ、引き馬乗馬があります。ミルキーフレンズと同様に、軽乗鞍でいろいろな乗り方にチャレンジしたり、手綱操作の練習などをします。
「学習タイム」では、まず各自の宿題を行い、分からないところは私が教えることもあれば、上の学年の子たちが教えてあげることもあります。上の学年の子たちは、教えることで再確認する機会になり、自信もついてきます。また音読の宿題は、ミルキーの小屋の前で読んで、ミルキーに聞いてもらうことで、苦手意識のある子どもでも楽しく取り組むことができています。
 宿題が早く終わった子どもたちは、こちらで用意した、迷路や点つなぎ、ゲーム性のあるプリントを自分で選んでやる事ができるようにしています。楽しみながら取り組み、学習に必要な力がつくようにと考えています。
また、みんなの宿題が終われば、カードゲームやボードゲームをすることもあります。そして活動終了後には、たいてい馬場での遊びが始まります。馬場でボール遊びや鬼ごっこ、かくれんぼなど、全力で遊び、それはとても楽しい時間のように見えます。
迎えに来られた保護者の方々と、子どもたちの遊ぶ姿を見ながらお話する時間も、貴重なものとなっています。

音読をミルキーに聞いてもらう

 

 2つのプログラムに共通していることは、異年齢集団での活動であるという点、そして学校以外の居場所であるという点です。
 異年齢集団では、馬のお世話等の作業があることで自然と協力するようになります。また、年上のお兄ちゃんお姉ちゃんに憧れたり、年上であることの自覚が成長を促したり、年齢に関係なく遊ぶことができたりと、子どもたちにとって最近はなかなか機会がないことができる場になっていると感じています。また学校に行きづらいと感じている子どもたちも含め、様々な子どもたちが参加していますが、その子が好きなことを思いきりできたり、自分らしく居られる場所があることが支えになり、学校でも頑張ろうと思えることもあるようです。
 継続的に参加してもらうことで、馬の学校としても子どもたちに応じた活動を用意できたり、保護者と一緒に子どもたちの成長を見守るという関係も作りやすいと感じています。今後は、活動場所を提供して下さっている農家さんとも協力して、さらに様々な子どもたちの居場所となるよう、平日の日中に馬のお世話や農業体験等の活動ができる仕組みも作っていきたいと考えいます。(つづく)