馬とはぐくむ「生きていく力」 (1)

各地の活動から

2024.10.24

馬の学校Milky Way  代表 峯﨑 友香理

馬とはぐくむ「生きていく力」 (1)

1.馬の学校Milky Way

任意団体<馬の学校Milky Way>の活動拠点は、山梨県北杜市高根町の田畑に囲まれた場所にあります。「馬が先生、馬場が教室」を理念に,馬とのかかわりを通して子どもたちの生きていく力を育むことを目的とした活動を行っています。

<馬の学校>の名称で、活動をスタートさせた2000年から2023年までの間は独自の施設を持たず、複数の乗馬クラブや乗馬施設等の協力をいただきながら,年に10~15回程度の活動を行っていました。参加者は3歳から子どもたちの祖父母の世代まで,障害のある子どもたちも多く参加してきました。私がハフリンガー種の「ミルキー」に出逢い、ミルキーが<馬の学校>の所有馬となった2009年からは、山梨県北杜市にある牧場に預託し飼育管理をしていただきつつ、そこでキャンププログラム等を行ってきました。その後2021年からはミルキーを北杜市の乗馬クラブに預託、私も北杜市に移住して、<馬の学校>としての活動をミルキーのみで行うことにしました。

その後、地域での様々なご縁がつながり、2023年の秋には同市内にある農家さんの敷地に引っ越し、準備期間を経て2024年春から現在の活動を始めました。そしてこれを機会に、名称を<馬の学校>から<馬の学校Milky Way>へと変更しました。2024年秋からは農家さんが隣接した場所で馬を眺めながら食事やお茶が飲めるカフェの営業を始められ、参加者の方にもゆっくりとしていただけるようになりました。

 

2.活動内容

(1)活動パートナーの馬たち

現在、<馬の学校Milky Way>には、ミルキーと、農家さんの所有馬であるアキオの2頭の馬がいます。ミルキーはハフリンガー種の25歳、食いしん坊でつなぎ場から脱走もする元気なおじいちゃん、現在は活動の柱として活躍しています。アキオはポニーの5歳、やんちゃで気が強い男の子、来春の引き馬デビューに向けて勉強中です。また、柵越しには農家さんが飼育している2頭の山羊が放牧されています。

(2)活動プログラム

私はこれまで多くの施設と連携して活動を行ってきましたが、活動内容を考える時に、「その施設の良さを生かす」ということを念頭に置いてきました。ミニチュアホースのいる施設では、一緒に場内をお散歩したり、大小の馬のいる施設では、ポニーのブラシがけの後、大きな馬のブラシがけに挑戦したり、複数の馬のいる施設での宿泊キャンプでは、担当馬を決めてお世話をするなど、その施設の環境だからこそできる体験を行うことで、お互いに連携の意義が感じられるようになると考えたからでした。

それらの経験を経てきたおかげで、所有馬はミルキー1頭でも、農家さんとの連携のなかで、多様なプログラムを展開することが可能となっています。

現在<馬の学校Milky Way>が行っているプログラムは、大きく分けて3つあります。

1つ目は、ビジターを対象にしたもので、引き馬乗馬やエサやり体験、お世話体験、大人のためののんびり乗馬体験などがあります。

2つ目は、会員を対象にしたもので、週末にミルキーのお世話と乗馬を楽しむ「ミルキーフレンズ」、放課後にミルキーのお世話と乗馬、そして学校の宿題をする「ミルキーアフタースクール」があります。

3つ目は、季節に応じたイベントで、「にんじんを育てて馬にあげよう」や春・夏・冬の長期休暇中に行う「ホーススクール」などです。

全てのプログラムを通じて大切にしていることは、子どもたちの意欲を引き出し、「やってみたい!」というチャレンジの機会を増やすことです。

 

3. ビジター対象の体験プログラム

今回は、ビジター対象プログラムの中の、「お世話体験」について紹介したいと思います。

「お世話体験」は、ブラシがけや馬小屋のそうじ、エサ作り、エサやりなどのお世話と引き馬での乗馬がその主な内容です。乗馬施設の多い北杜市でも、馬のお世話をする体験ができるところは少なく、引き馬乗馬では物足りなさを感じたり、乗馬よりもお世話に関心のある子どもたちが参加してくれています。

まずはお世話をする馬のことを知ってもらい、安心して関われるようにミルキーやアキオの性格などを伝えたり、クイズを通して馬への関心を高めるなどをします。ブラシがけでは、馬のあたたかさを感じながら、どこにブラシをかけたら気持ちがいいのか、馬の様子を見ながら行います。ゆっくりと時間をかけて行うことで、子どもと馬との心理的な距離が縮まっていくように思います。また、馬小屋のそうじでは、みんなで協力してボロ(うんち)を取り、それらを肥料に使っている近くの畑や田んぼを見ることで、環境循環の一端を感じることができます。

引き馬乗馬では、スタッフが引いて馬場を3周するのですが、進めの合図を乗っている子どもに出してもらうことを大切にしています。自分の気持ちやからだのタイミングで進めの合図を出すということ、それを馬に伝わる方法で行うということを通じて、自己決定と相手に伝わる意思表示の機会にしたいと考えています。自分の合図が馬に伝わったとき、皆とても嬉しそうです。2周目は、蹄跡を歩くか、あるいはコーンを回るジグザグコースを歩くかを尋ね、決めてもらいます。「写真を撮ってもらいたいから蹄跡を歩きたい」「面白そうだからジグザグコースに」など理由は様々ですが、自分で決めたことにチャレンジするということを大切にしたいのです。

 

4.おわりに

新しい場所での活動がスタートして約半年が経ちました。活動の場所が地元の方でも少しわかりづらいところにあるということもあり、まだまだ認知度が低いと感じています。しかしそのような中でも、以前からのリピーターの方や、参加者からのご紹介、お世話体験ができるということで探して来てくださる方もいて、とても嬉しく感じています。年齢や障害の有無にかかわらず、のんびりじっくりと馬とかかわることができ、また馬を通して人と人とがつながる場でありたいと思っています。(つづく)