ポニーのいる特別支援学校として 第3回

各地の活動から

2022.11.28

深谷はばたき特別支援学校 | 栗原 理恵 

ポニーのいる特別支援学校として 第3回

「ポニーを活用した高等部の教育活動の実践事例」 栗原 理恵

 

本校高等部では昼休みの時間を利用し、飼育委員会の活動や各クラスでの輪番制によるお世話当番をすることで、ポニーという生き物と触れ合う時間を設けています。家庭で飼育する動物としてはあまり類を見ない動物であるため、体躯の大きさに恐怖を感じる生徒もいたり、動物の持つ澄んだきれいな瞳に魅了されたり、生徒個人によって抱く感情は様々です。生き物のお世話の中でも、特に体が大きく、ケアが多分に必要な動物のお世話をすることは、その経験を通して得られるものが大きいと感じています。

 

1、 飼育委員会

本校高等部では委員会での活動として、『メロン飼育委員会』を立ち上げています。主な活動は、昼休みの時間を利用した飼育活動です。また、今年度はメロンの生誕15周年という節目でもあったため、誕生日を記念した活動も行いました。

 

飼育活動では、月に1、2回昼休みに委員会メンバーでお世話を行っています。お世話の内容は、ブラッシング、蹄の裏堀、蹄油、餌やり、小屋掃除等です。生徒は、委員会に入ってまでお世話をしに来るため、ほとんどモチベーションの高い生徒が集まりますが、中には苦手を克服する、という意識で参加する生徒もいます。

活動当初はポニーに触れることができず、小屋掃除等のポニーから離れた活動を選ぶほど恐怖を感じている生徒がいました。そのため、初めに教員が手本を示したり、手を添えて安全な位置からブラッシングをしたりして、直接触れなくてもできるお世話から経験を重ねていきました。すると、次第に触れることができるようになり、年度末には、多少の恐怖感は残るものの、一人でポニーを撫でることができるようにまでなりました。

 

誕生日記念行事としては、校内でメロンへの誕生日メッセージを募り、それらを貼り付け、展示する『メッセージボード』を設置しました。高等部だけでなく、小、中学部からも多数のメッセージが寄せられ、華やかなメッセージボードを完成させることができました。ポニー共育推進委員会では、メロンからのお礼として、蹄の型をとり、展示しました。裏堀をしないと見ることができない蹄の裏側に、生徒たちは驚きの声をあげていました。メロンの蹄という細部を知ることで、ポニーをより身近に感じられる活動になったと感じています。

 

2、 クラスによる当番

委員会での活動だけでなく、昼休みの時間には各クラスが輪番制で飼育当番を担当しています。お世話の内容は委員会の活動と同じです。委員会と異なる点は、当番制となると、必ずしも全ての生徒が前向きにお世話に取り組むわけではなく、中には煩わしさを感じながら参加する生徒もいることです。それでもお世話を怠らない生徒に話を聞くと、「私たちがやらないと、メロンのご飯がないし、いつも一匹でかわいそうだから」と、動物に心を寄せる声が返ってきました。心の持ちようで行動が促させることの表れだと感じました。

 

3、 活動と成長

先述した通り、生き物を飼育することで得られるものは多分にありますが、生徒が一人で飼育するには困難な大きさであるうえ、お世話の内容も多い生き物です。なので、ポニーの飼育の経験を通して、「責任感」と「協力性」が養われると考えました。

「責任感」については、飼育作業を一つの命を預かる仕事として捉えることで、煩わしい作業ではなく、使命感溢れる仕事として考えることができます。生徒たちは、繰り返し当番を行うことで、その使命を感じ、責任感の醸成に役に立てられていると感じます。当番の日になると、「今日は当番だよ!」と、力強く教えてくれたり、仕事を覚えて、それぞれが役割を分担し、進んでお世話を行うことができるようになったりしてきました。これらの行動、態度は、生き物を飼育することに対して、責任感が養われていることの表れだと考えられます。

「協力性」も、ポニーの飼育を通して養われていると感じます。ポニーのお世話は生徒一人の力で行うことは困難であるため、委員会のメンバーや、クラスメイトと協力して行わなければなりません。また、昼休みという限られた時間内で行わなければならないため、役割分担をして作業を円滑に進める必要があります。つまり、それぞれが役割を果たすことで、初めてポニーのお世話ができたといえるのです。これは、一つの目標に向かってそれぞれが力を発揮し、協力し合うことで達成する、という経験をしていると捉えることができるのです。

 

4、 総括

私たち高等部は、飼育作業を通して、多様な経験と成長が得られると考えています。そのため、この飼育作業を、仕事に対する責任感や、仲間と協力する大切さ等、社会に出てから必要な態度を身につける作業として捉え、活動しています。単に生き物を育てるということだけでなく、生き物を育てることから何を学べるか、生徒の成長にどのように寄与できるか、といったことを考えながら、この活動を永く続けていけたらと願います。